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治療のためのキーワード
突然、がんの告知を受けたら、それまで経験のない不安や恐怖に襲われる人も少なくないでしょう。そんな中でも、自分が受ける手術や治療のことを理解し、選択していかなければなりません。少し前を歩いた私たち経験者が、初めに理解しておいたほうがよいと実感したキーワードを、ここでご紹介していきます。「納得できる治療」のためのキーワードです。 |
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よい病院・よい主治医とは-
よい病院、よい主治医を選びたい!と患者なら誰もが思うでしょう。しかし、「よい」というのは、どういうことでしょうか? ある患者にとっては、よいドクターでも、別の患者には、そうでもないと感じられることもあります。患者一人一人の価値観や考え方、生活スタイル、おかれている状況、病気と付き合う姿勢などが違う中、だれもに共通して「よい」というのは難しいことかもしれません。「自分にとってのよい」という捉え方になるでしょう。 |
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「自分にとってよい」病院と主治医を見つけていくためには、まず、自分が行こうとしている病院の役割と特徴を知っておくことが大切です。 |
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病院を選ぶときの大学病院やがん専門病院に対するブランド志向は、根強いものがありますが、その役割として、診療だけでなく、教育や研究を担っていることもあります。 |
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乳がんの病院選びでは、以下のようなポイントをおさえておきましょう。 |
<乳がんの病院を選ぶときのポイント> |
●乳腺外科・乳腺外来がある
●乳腺専門医がいる
●標準治療が行われている
●無理なく通院できる
●病院の評判を知る |
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この度、日本乳癌学会が法人化することで、いままで表に掲げることができなかった「乳腺専門医」という資格を、医療機関の看板や電話帳などに出すことができるようになります。
参照:乳腺専門医のいる病院については、
「全国・乳腺専門医のいる病院」のページをご覧ください。
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主治医については、診断力、技術力、治療の実績、人柄、自分との相性など、患者としては、すべて揃っていて欲しいものですが・・・。以下のポイントは、おさえておきたいものです。 |
<主治医について> |
●乳腺の専門医
●納得できる言葉で説明してくれるか
●どんな質問にも答えてくれるか
●誠実な態度で接してくれるか
●自分との相性はよいか |
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乳がんは、手術だけで考えるのではなく、その後の治療や経過を観察しながら、長く付き合っていくことになる病気です。したがって、主治医との付き合いも長くなります。人として対等に向き合い、信頼関係を築いていけるかどうかがとても大切です。診察室でドクターと向き合った初めの印象でも、感じとれることはあるでしょう。 |
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インフォームド・コンセントについて
Informed Consent=「説明と同意」と訳されますが、もう少しわかりやすく説明しましょう。 |
インフォームド・コンセントとは・・・ |
医師は、患者が理解できる言葉で
病気や治療について十分説明し
患者はそれを理解した上で、納得・同意して
自分の治療を選択していくこと |
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ICの背景
ICは、もともと米国で、患者の人権を守るため、法律上の言葉として使われ始めました。日本では、「僕の言うとおりにすれば間違いない。あれこれ考えず、黙ってついてきなさい」「先生に全部おまかせします」のパターナリズムの医療から、一人一人の人権意識の高まりや価値観の多様化などによって、自分に大切な情報を知った上で、患者自らが治療を選択し決定していく「患者が主役の医療」に変わってきました。医師から一方的に施されるのではなく、患者も、責任を持って治療にのぞんでいきます。 |
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ICは、医療のあらゆる場面で行われます。『医療は、ICの積み重ね』と考えてもよいでしょう。 |
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ICで患者と医師は、互いに、患者の意思と医師の専門性を尊重しながら向き合います。 |
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◆何を質問したらよいかわからない
納得のいく治療を目指すためには、患者もまた、努力することが必要です。情報を集めたり、基礎知識を理解するために、このホームページも利用してください。 |
=患者ができること= |
・自分でも情報を集めたり、勉強したりする
・あらかじめ質問したいことを整理しておく
・IC中も大事なことはメモをとる
・理解・納得できなかったことは、何度でも質問してみる |
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◆一人一人、「理解度」や「知りたい度合い」は違う
一人一人に応じて、説明の仕方を変えて、理解の程度を確認しながらICを進めるのが医師の役目です。患者は、思い込みや情報選択の仕方が偏らないようにしたいものです。また、心理的にも説明を受け入れる状態にない場合もあり、患者の心の動きも配慮されなければなりません。 |
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ICの背景
医師が考える治療方針を提案する場合は、患者の価値観や、考え方、生活状況なども考え合わせます。年齢、未婚か既婚か、子供がいるいない、夫や家族との関係、置かれている状況、仕事、経済面、性格など、患者の背景も考慮する必要があります。
病気以外のことも、治療を受ける際に関わってくると思われることは、はっきりと医師に伝えましょう。 |
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頭では理解できていても、自分にとって、重大な選択と決定の場面では、迷ってしまうことも多いものです。独りで悩むことはありません。ICは、家族や友人に同席してもらい、一緒に考えてもらうこともできます。また、医師は、患者とのやり取りを繰り返しながら、患者本人が納得して治療を選ぶことができるまで協力してくれるはずです。これから治療を続けていく道で、いわば主治医は、患者の「伴走者」です。しっかりと向き合って、ひとつひとつ、双方向のやり取りを繰り返しながら、信頼関係を築いていきましょう。 |
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「納得できる治療」は、信頼関係のもと、よりよいコミュニケーションとインフォームド・コンセントの上に成り立ちます。 |
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セカンド・オピニオンについて
Second Opinion=「第二の意見」ということですが、もう少しわかりやすく説明しましょう。 |
セカンド・オピニオンとは・・・ |
主治医の説明、診断、治療方針に
納得できない場合、確認したい場合、
別の選択肢がないかを知りたい場合に
「他の医師の意見」を聞いてみること |
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他の医師に意見を聞いたりすることは、主治医に悪いし、二度と主治医のところに戻ってこられないように思う人もいるかもしれません。でも、SOの必要を感じた場合は、遠慮することはありません。重大な決断をしなければならない局面で、担当医以外の医師にも意見を聞いてみたいと思うのは自然なことです。 |
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SOは、納得の治療のための「手段」であり、「目的」ではありません。自分の意見に合致する医師が見つかるまで、次々に意見を聞きに行く人がいます。SOは、ドクターショッピングではないことをわかっておきましょう。 |
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基本的には、どこの施設でもSOを求めることができるはずです。最近は、セカンド・オピニオン外来を置いている病院も出てきました。 |
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主治医に伝えることなく、こっそりSOを求めるのはできるだけやめましょう。主治医は、患者の治療プランをトータルに描きながら責任をもって治療にあたっています。どんな場合も、マナーを守ることは大切です。また、SOを求めに行く病院に、患者の情報を持っていくことができない場合は、再び検査などが必要になってくることもあります。 |
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EBMについて
Evidence-based Medicine=「根拠に基づいた医療」と訳されています。 |
個々の医師の経験や偉い先生の意見に基づいて進められる従来型の医療ではなく、信頼度の高い臨床研究で科学的に証明された根拠(エビデンス)を利用しながら、一人一人の患者に最良の診断や治療を行う。 |
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ICの背景
EBMは、根拠に基づいたデータ主義の実践ではありません。臨床研究データだけでなく、医師の経験や技能、患者一人一人の事情や価値観、希望も合わせて、統合的に判断され、進められる医療のことです。 |
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日本の乳がん診療では、いまだ、地域や病院によって診療内容にばらつきがあり、全国どこでも同じ医療が受けられるということではありません。そこで、地域差、ばらつきのない乳がん診療を目指して、日本乳癌学会では、認定医・専門医制度をスタートさせました。そして、まもなく、EBMの手法を用いた日本の「乳がん診療ガイドライン」が整えられ、患者にもわかる形で公表されます(されるはずです)。適切な診療をサポートするものになるでしょう。 |
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QOLについて
Quality Of Life=「生活・生命の質」と訳されます。 |
QOLは、治療の副作用で生活面での質が下がったり、ターミナルケアのときだけに使われる言葉ではない。がんと診断されたときから、患者は生活上の問題や、心理精神的な不安や痛みを抱える。がんと付き合いながら生きる<すべての瞬間>のQOLとして捉えられる。 |
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がんと診断されてから、患者は、さまざまな面で痛みや問題を抱えます。その人の生活がどうなるか、生き方がどうなるかで、治療の内容も変わってくるでしょう。また、病気の部位を治療(キュア)するだけでなく、トータルなケアが必要になってきます。乳がんの場合は、手術で入院する期間(病院にいる期間)は短いですが、病院の外でも、患者はがんと付き合いながら生きる生活が続きます。 |
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医療の目的も、キュアとケアを考えたものになってきました。 |
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しかし、一人一人のキュアとケアをトータルに行い、きめこまかく対応していくための受け皿は、日本の医療現場では、まだ、十分整っているとはいえません。 |
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ICの背景
患者の抱える問題に、外科医が一人で対応するのではなく、患者を真ん中にして、チームで関わりながら、患者のQOLの向上を目指そうとする動きが、少しずつ出てきています。しかし、チームメンバーの間のコミュニケーションがスムーズにいかないような場合は、患者が医療者間を自力で行き来しなければならず、チーム医療とは言えないでしょう。 |
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患者であるあなたのそばには、医療者だけでなく、家族や友人、仕事仲間もいてくれるでしょう。初めはあなたにどのように接したらよいかわからず、おどおどしたり、なにかをしなければと思うあまり、逆に気にさわるようなことをやったり言ったりするかもしれません。しかし、そばにいて、話を聞いてもらうだけでも、相手の胸を借りて気持ちの整理ができることもあります。生活面でも手伝ってもらえることもあるでしょう。苦しいときや困ったときは、遠慮しないで甘えてみましょう。 |
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ICの背景
同じがん患者でも、がんと生きる一人一人、病状も、考え方や感じ方も、価値観、置かれている状況も・・・違っています。他のがん患者と自分を比べてみる必要はありません。病気ではない人と比べる必要もありません。あなたはあなた。がんになったことも含めて大切なあなたです。不安感や孤独感で、ときには、部屋の隅で独りひざを抱えることもあるかもしれません。泣いてしまうこともあるかもしれません。そんなときも、そのまま「まるごとの自分」を受け入れてあげましょう。苦しいけれど、自分と向き合う時間は、その後の人生に、必要な気づきをくれる時間なのかもしれません。 |
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ICの背景
QOLの向上というのは、病気と付き合いながらも、「自分らしく生活し、自分らしく生きること」ではないでしょうか。がんになって間もないころや治療が大変なときは、そう思う余裕もないかもしれませんが、でも、「どんな瞬間も、自分らしく生きることはできる!」と感じて、立ち上がることができたとき、胸をはって、自分の今日を踏みしめて歩けるような気がします。 |
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